現在の日本の食糧事情は極めて豊かであって、世界中の食べ物が容易に入手できる状況にあります。経済発展の恩恵による面が大きいわけですが、半面、失ったものも大きいものがあります。得たものは、住宅問題を別にすれば欲しいものは何でも購入できる高度消費社会の出現であり、失ったものの代表は「思いやりの心」と「ほどほどにして分かち合う心」ではないでしょうか。
家庭の食事も個人個人がバラバラで、食事時間もまちまち、食べる物も好き勝手で常に余分に購入して好きな食べやすい部分だけを食べ、嫌いな部分は残して「ゴミ」として捨ててしまうといった例が目立ちます。
日本では食品廃棄物等が年間2,759万トン(農林水産省「食品ロス量(平成28年度推計値)」)出されています。その内まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる食品ロスは643万トンです。自治体はその「ゴミ」の処理に困っています。
食品ロスを国民一人当たりに換算すると”お茶腕約1杯分(約139g)の食べもの”が毎日捨てられていることになります。大切な資源の有効活用や環境負荷への配慮から、食品ロスを減らすことが必要です。
参考:消費者庁ホームページより
現代の衣・食生活と豊かさの代償
衣生活
- 買う、保管する、選んで着るというだけで、洗濯も外注する
- 趣味としての裁縫
- ファッション雑誌による情報伝達
- 子どもの衣類の世話も高校生までで終わり、後は自分で買ってくる
食生活
- 家庭内での食事回数の減少
- ファミリ-レストラン利用の家族サ-ビス
- 料理づくりの趣味化
- クッキングブック、インターネトによる情報伝達
- おふくろの味の産業化
- 勤務、登校に合わせた朝食、親と子の別々の食事
豊かさの代償
- 食料自給率の低下と食料安全保障
- エネルギ-の浪費と地球環境の悪化
- 大量消費と日本経済の将来的不安
- 高齢化社会と出生率低下・生活習慣病の若年化
- 欲望の限度、欲求不満、生きがいとは
食は心をつくる
日本人は古くから「物を大切に」してきました。わずか60年程前までは国民の大多数の願望が「白米を腹一杯食べたい」でした。乏しい食料を大切に分かち合って食べてきたのです。老若男女が皆で助け合って生きてきたのです。今、「昔に帰れ」などとは言えませんが、人の家族形成の原点は他の動物と異なり、成人した子どもにも食を分け与え、老齢化した親を扶養することにあったことを思い出し、どうすれば物を大切にする心を取り戻すことができるかを考えるときだと思います。
核家族化が即、疎遠化になってきていると指摘する学者も増えてきています。これからさらに深刻になる環境問題や高齢社会の対応のためにも、中庸の心を大切にする社会を目指すべきであると考えます。
そこで、まず初めに取り組むべきことの一つとして、食事を大切にする心、食物を大切にする心を各方面で取りあげていただきたいと思います。自分の金で買ったのだから捨てようとどうしようと勝手だ、という社会は長く続くはずはありません。食を大切にする心は自分自身を大切にし、健康をつくる原点であって、社会の良心にも通じる道であり、「食は心をつくる」のであると考えます。
「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称 食品ロス削減推進法)が、令和元年5月31日に令和元年法律第19号として公布され、令和元年10月1日に施行されました。(消費者庁HPより)