高齢者の食事と健康

加齢と生理機能

   私たちの体は加齢に伴い、体の機能のうちでも食事や栄養に関係の深い各種の器官に変化が生じてきます。感覚や味覚が鈍くなるため、濃いめの味付けになり食塩の取り過ぎの原因になります。喉の乾きの感覚が鈍くなったり、筋肉に蓄えられていた水分が筋肉の衰えとともに減少し、また、腎臓における水や電解質(塩分)の調節機能が悪くなることなどにより、脱水症を起こしやすくなります。

   唾液や胃液などの消化液の分泌量も少しずつ減少し、また、歯牙の欠損や義歯により咀嚼力が低下するなどにより、食事全体の摂取量が減少したり、便秘や下痢などを起こしやすくなります。特に、風邪をひいて熱があったり、下痢が続いたりすると脱水を起こしやすく、体の水分が不足すると脱力感などが現れ、食欲不振を招きやすく、栄養不足の原因になります。

   また、日ごろカルシウムの摂取量が不足し、運動が不足している人などは、骨粗しょう症を起こしやすく腰痛や骨折などの原因になります。老化を防ぎ活力を保つうえで、毎日の食事は、体の生理機能の変化に合わせて、良い食習慣を身に付けるとともに、胃腸を大切にし、自分の体力や生活リズムに合わせ、散歩や体操など適度の運動を行うことが大切です。

食事のポイント

1.3食を規則正しく、腹8分目を守る

   朝食や昼食がおろそかにならないよう3食をしっかり食べます。歯や胃腸の具合が悪く、1度に十分な量が食べられない場合は、間食を多めに取ることも必要です。

   若いころに比べて、エネルギ-の必要量が減少しているので、ご飯や甘い菓子類ばかりを食べると肥満の原因になります。肥満は糖尿病や心臓病、動脈硬化、高血圧、腰痛、運動不足などの原因にもなります。

2.主食・主菜・副菜をそろえ、栄養のバランスをよくする

   毎日の食事は、特定の食品や料理に偏らないように、いろいろな食品を使用し「主食・主菜・副菜」をそろえるようにします。

(1) 主食
   ご飯、めん類、パンなどの食品は、いつも同じくらいの量を食べるように心掛けます。
   肥満している場合は多く取り過ぎないようにします。また、めん類やパンなどのときは、おかずがおろそかにならないように気を付けます。

(2)主菜
   魚、肉、卵、大豆製品などの食品には、必須アミノ酸を多く含む良質のたんぱく質が含まれています。
   たんぱく質は、体を構成する成分であるため、これらの食品が不足すると臓器の働きが低下したり、血管がもろくなり老化を早めます。魚、肉、卵、大豆製品のうち、いずれか1品程度を毎食の食事に使用するようにします。また、肉類は動脈硬化を予防するうえから脂肪の少ない部分を使用しましょう。

(3)副菜および汁物
   いも、野菜、海藻、きのこ、こんにゃくなどの食品には、ビタミンやミネラル、食物繊維などが含まれています。体の調子を整え若さと活力を保ち、便秘を予防するうえで必要です。
   煮物、和え物、いため物などの料理にして十分に食べるようにします。汁物には、これらの食品のほか大豆製品、卵などが使用できます。水分の補給にも役立つので、かつお節や昆布だしをおいしく良く取って薄味とし、1日に1~2杯飲むようにします。高血圧や腎臓病などがあって医師から食塩の制限を指示されている場合は1日1杯程度にしましょう。

3.味付けは薄味にし、食塩を控える

   食塩の取り過ぎは高血圧の原因になり、高血圧は心臓病や脳卒中の誘因になります。味覚が鈍くなってくるので濃い味付けになりがちです。煮物やあえ物、汁物などは「だし」をよく取って薄味にし、しょうゆはむやみにかけない、干物や漬け物は控えるなど食塩が多くならないように心掛けましょう。

4.料理は食べやすくする

   材料は小さめに切り、よく煮込むようにします。場合によっては、片栗粉を使ってトロミを付けると食べやすくなります。

5.間食は、食事だけでは不足しやすい食品を主体に取る

   果物や果汁、牛乳、ヨ-グルトなどには、ビタミンやカルシウムなどが多く含まれています。

   また、水分を補給し便通を整えるうえからも、これらの食品を中心に取るようにします。菓子類を食べるときは、お茶などの水分も一緒に取るようにしましょう。

   肥満気味の場合は、甘い菓子類が多くならないように気を付けましょう。
                                    (更新 2023.12)