生活習慣病の予防と食物繊維

見直される食物繊維

日本人の食生活の変化が、生活習慣病の増加につながり、特に、脂肪の増加や食塩の過剰摂取に加えて食物繊維の減少も大きな原因として指摘されています。

食物繊維は、従来は人の消化酵素では消化されない成分として、栄養的には価値のないものとみなされ、食物の不要物として扱われてきました。しかし、1950年代になって当時西欧に多く発症していた、糖尿病や心疾患、肥満などの非感染性疾患の予防や治療に、食物繊維が重要であることの研究が、英国などにおいて発表されるようになりました。現在では、食物繊維を十分に摂取することによって、

  1. 咀嚼回数が増す。
  2. 消化管運動が活発化する。
  3. 腸内残渣物の腸内通過時間の短縮が図れる。
  4. 糖質や脂質などの消化吸収を低下させる。
  5. 腸肝循環する胆汁酸を減少させる。
  6. 腸内細菌叢を良好にさせる。
  7. 便容量を増大させる。
  8. 腸内圧および腹圧を低下させる。
  9. 腸内細菌によるビタミンの合成に役立つ

などの作用があることが分かり、これらの働きが健康の維持と疾病の予防に大きく関わっていることが分かってきました。中でも、動脈硬化症、虚血性心疾患、腸疾患(大腸がんなど)、脂質異常症、糖尿病、肥満、コレステロ-ル胆石症などの疾病は、食物繊維の不足が深く関わっていることが明らかになり、生活習慣病の予防や治療には、食物繊維を十分に摂取することが重要とされています。

食物繊維の働き

食物繊維には水溶性の食物繊維と不溶性の食物繊維があり、その種類によって作用は異なりますが、一般的には次のような働きがあります。

1. 便通を整えて糞便量を増す

食物繊維の保水性とゲル形成能は便容量を増加させ、便の固さを正常化し、腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にして便通を整えます。

2. 動脈硬化症、大腸がんなどの予防に役立つ

腸内で量を増した残渣物は、胆汁酸や腸内の発がん物質などを吸着して糞便として排泄することにより、動脈硬化症、大腸がん、胆石の予防に役立ちます。

3. 肥満や糖尿病の予防に役立つ

食物繊維を多く含む食品は、食べる際に多くの咀嚼回数を必要とするため、唾液の分泌量が増して満腹感を得ることにより、食べ過ぎの予防になります。また、糖質や脂質の吸収を遅らせる働きがあるため、肥満の予防に役立つほか、食後の血糖の上昇を抑制し、インスリンの分泌を節約できることから、糖尿病の予防や治療にも役立ちます。

4. 消化管機能を亢進させたり、有害物質の毒性を阻止する

大腸の働きを活発にし、また、大腸内の有害細菌の増加を抑え、有用細菌を優勢にします。腸内に持っている百種類以上の細菌の働きを活発にしたり、粘液分泌を促進し、腸内細菌叢を改善して腸の健康に役立ちます。

日本型食生活のよさ

昭和30年代後半までの私たちの食事は、主食としてご飯を中心に魚介類と、いもや野菜の煮物、みそ汁、漬け物などで構成されていました。このような食事であれば、特に注意しなくても食物繊維は20グラム以上の十分な量が取れていました。しかし、現代の食事パタ-ンは、コッテリとした洋風パタ-ンへと変化し、肉類の増加(動物性たんぱく質、動物性脂肪の増加)、清涼飲料や菓子類をはじめとする砂糖の増加と、米の摂取量の減少が目立ち、食物繊維の摂取量は15グラム程度へと大幅に減少しました。

その結果、日本人には縁の薄かった大腸がんやさまざまな生活習慣病が増加しています。また、腸内の有害菌の増加による免疫能低下なども指摘されています。

食物繊維の有用性が明らかになった現在、もう一度、伝統的なバランスの良い日本食を見直し、生活習慣病を予防しましょう。