たばこの煙による健康への悪影響は、たばこを吸う本人だけでなく、喫煙しなくても身の回りのたばこの煙を吸わされる、“受動喫煙”についての健康影響(肺がん、虚血性心疾患、脳卒中など)も近年多く報告されており、周囲の非喫煙者への健康影響は深刻です。
たばこの煙には、分析するといろいろな化学物質が含まれていますが、有害物質は大別してガス成分と粒子成分とに分けられます。
ガス成分で問題なのは一酸化炭素であり、粒子成分ではタ-ル(いわゆるヤニでニコチンも含まれます)で多くの発がん物質を含んでいます。
たばこの害
1. タ-ル
一口に発がん物質といってもいろいろな種類があり、大きく分けて4種類があります。たばこのタ-ルには4種類とも含まれており、発がん作用が強力で「完全発がん物質」と呼ばれるものも含まれています。
2. ニコチン
ニコチンはたばこという植物の葉のみに含まれる物質で、レタスの葉を喫煙してもおいしくないのはニコチンがないからです。ニコチンは40㎎(1㎎は千分の1g)を人間に与えると死亡する毒物です。たばこ1本には普通0.3~2.0㎎くらい含まれていて、肺に入ると非常によく吸収され、全身の血管を収縮させるため血圧の上昇、心臓がドキドキする心拍数の増加が起こります。
3. 一酸化炭素
たばこの煙の中には一酸化炭素も含まれています。一酸化炭素が血液中の血色素と結合すると新鮮な酸素を体内の組織へ運ぶ血色素の機能が失われ、体の各組織は酸素不足の状態となります。喫煙量によって差はありますが、酸素運搬機能を失った血色素が10%以上、ヘビ-スモ-カ-では20%にも達します。
4. ビタミンCの損失
ニコチンは、ビタミンCの吸収を妨げ、体内の必要量を増加させ、煙の成分の一部は体内のビタミンCを破壊するといわれています。日本人の食事摂取基準(2020年版)における成人のビタミンCの推奨量は1日100mgですが、喫煙者は1日に35mg多く摂取する必要があると考えられており、慢性的なビタミンC不足に陥っていても不思議ではないのです。
5. たばこの煙
たばこの煙は2種類あり、一つはたばこの中を通って口に入る主流煙と呼ばれる煙、二つめはたばこの先の火先(点火部分)から立ち上がる副流煙です。この二つの煙の成分にはかなりの違いがあり、副流煙の方が主流煙より有害成分が多く含まれています。例えば、一酸化炭素は5倍、「煙が目にしみる」原因のアンモニアは46倍も多く含まれています。これはたばこを吸わない周りの人には大変迷惑なことです。
喫煙により、がん、心臓病、脳卒中、歯周病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの特定の罹患率が高いことおよび、これらの疾病の原因と関連あることは、多くの疫学研究等により指摘されています。たばこの煙による健康への悪影響は喫煙者本人にとどまりません。他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙による健康への悪影響も指摘されています。
受動喫煙の防止の観点から、公共の施設での禁煙が進められています。家庭においても、愛する家族のため、少なくとも家族の前ではたばこを吸わないようにしましょう。そして、自分の健康や家族の健康のため、思い立ったら禁煙をしてみませんか。案外、簡単にたばこは止められるかもしれません。
参考文献:「酒・たばこ・コ-ヒ-」 女子栄養大学出版部
(更新 2022.12.11)