食は心をつくるー食品ロスを減らす心ー

   現在の日本の食料事情は極めて豊かであって、世界中の食べ物が容易に入手できる状況にあります。経済発展の恩恵による面が大きいわけですが、半面、失ったものも大きいものがあると考えられています。得たものは、住宅問題を別にすれば欲しいものは何でも購入できる高度消費社会の出現であり、失ったものの代表は「思いやりの心」と「ほどほどにして分かち合う心」ではないでしょうか。

   家庭の食事も個人個人がバラバラで、食事時間もまちまち、食べる物も好き勝手で常に余分に購入して好きな食べやすい部分だけを食べ、嫌いな部分は残して「ゴミ」として捨ててしまうといった例が目立ちます。

   日本では食品廃棄物等が年間2,301万トン(農林水産省「食品ロス量(令和元年度推計値)」)出されていて、その内まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる食品ロスは522万トンです。自治体は、この「ゴミ」の処理に困っているのが現状です。
 食品ロスを国民一人当たりに換算すると”お茶腕約1杯分(約113g)の食べもの”が毎日捨てられていることになります。大切な資源の有効活用や環境負荷への配慮から、食品ロスを減らすことが必要です
消費者庁HP)。

 現在、世界中で広く取り組まれている持続可能な開発目標(SDGs)は、すべての人々にとってよりよい、持続可能な未来を築くための青写真です。貧困や不平等、気候変動、環境劣化、繁栄、平和と公正など、私たちが直面するグローバルな諸課題の解決を目指すというものです。誰一人置き去りにしないために、2030年までに各目標・ターゲットを達成することが重要とされています。このSDGsの12番目の目標に「つくる責任 つかう責任」があり、「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」ことが掲げられ、「水」と「エネルギー」、そして「食料」が掲げられています。食料については、「毎年、生産される食料全体の3分の1に相当する13億トン、価値にしておよそ1兆ドルの食料が、消費者や小売業者のゴミ箱で腐ったり、劣悪な輸送・収穫実践によって傷んだりしている」と課題が提起されているのです。
 賞味期限や消費期限切れで捨ててしまうことを無くしたり、食材を無駄なく使ったり、食べ残しは捨てずに別の料理に作り替えたりすることも必要です。そんな家庭でできるちょっとした工夫を私たち一人一人が心がけることで、この問題は大きく解決できるはずです。
 有り余る食品が本当に困っている人に行き届かない仕組みや、経済発展を優先した過剰な供給と消費の仕方を改善することが「食品ロス」を無くすために必要なのだと、改めて自分たちの身の回りを振り返ってみませんか。

我々は食生活の豊かさを得ると同時に、その代償も払っています!

食生活の豊かさ

  1. 中食・外食の充実
  2. 好きなものが好きな時に購入できる便利さ(コンビニ・24時間営業)
  3. ファミリーレストラン利用の家族サービス
  4. 料理づくりの趣味化
  5. クッキングブック、インターネットによる情報伝達
  6. おふくろの味の産業化
  7. 勤務、登校に合わせた朝食、個人嗜好に合わせた別々の食事

豊かさの代償

  1. 食料自給率の低下と食料安全保障
  2. エネルギーの浪費と地球環境の悪化
  3. 大量消費と大量浪費(日本経済の将来的不安)
  4. 高齢化社会と出生率低下・生活習慣病の若年化(健康被害、栄養不良の二重負荷)
  5. 欲望の限度、欲求不満、生きがい・価値観の喪失

食は心をつくる:食べ物への感謝の気持ちで食品ロスを減らそう!

   日本人は古くから「物を大切に」してきました。乏しい食料を大切に分かち合って食べてきた時代がありました。老若男女が皆で助け合って生きてきたのです。人の家族形成の原点は、他の動物と異なり、成人した子どもにも食を分け与え、老齢化した親を扶養すること、まさに共食、食を楽しく、分かち合う「こころ」であったことは間違いないでしょう。どうすれば食べ物を大切にする心を取り戻すことができるかを考えなければならない時代なのかもしれません。

   核家族化が、疎遠化の原因と指摘する学者も増えてきています。これからさらに深刻になる環境問題や高齢社会の対応のためにも、我々一人一人が「誰一人置き去りにしない社会」を目指す意識を持つことを求められているのだと思います。

   食事や食物を大切にする心を大切にしましょう。自分のお金で買ったのだから捨てようとどうしようと勝手だ、という社会は長く続くはずはありません。食を大切にする心は自分自身を大切にし、健康をつくる原点であって、社会の良心にも通じる道であり、「食は心をつくる」のだと思います。本当に大切な、大切な「こころ」を育みましょう。

*「食品ロスの削減の推進に関する法律」が、令和元年5月31日に令和元年法律第19号として公布され、令和元年10月1日に施行されました(消費者庁HP)
                                   (更新 2023.12)